業界別 熱中症対策ガイド

倉庫業の熱中症対策

空調のない大型倉庫内で作業員の安全を守るために。蓄熱対策・フォークリフト作業・ピッキング作業の実践ガイド。

約800件
倉庫内の
年間搬送数
約150件
フォークリフト
作業中の発症
50℃超
夏季の
倉庫内温度

1.倉庫内の熱中症リスク

倉庫業は「屋内作業」のイメージから熱中症リスクが軽視されがちですが、実際には空調設備のない大型倉庫内は夏季に50℃を超える極めて過酷な環境になります。金属屋根からの輻射熱が蓄積し、窓や換気口が限られた構造のため、熱気が倉庫内に滞留します。

なぜ倉庫内で熱中症が多いのか

  • 屋根からの輻射熱による蓄熱:金属製の屋根が日射を吸収し、その輻射熱が倉庫内に放射されます。特に折板屋根の倉庫は断熱性が低く、屋根裏温度が70℃を超えることもあります
  • 空調設備の不足:大型倉庫は空間が広大なため、全体を空調することが困難です。スポットクーラーを設置しても効果が限定的で、作業場所全体の温度低下は望めません
  • フォークリフトのエンジン排熱:エンジン式フォークリフトは排気ガスと排熱を倉庫内に放出します。複数台が稼働する倉庫では、排熱が蓄積して室温をさらに押し上げます
  • ピッキング作業の連続歩行:広大な倉庫内を歩き回るピッキング作業は、1日あたり1万歩以上の歩行量になることもあり、身体的負荷が高く体温が上昇します
  • 夏場の入出荷繁忙期:飲料・食品の出荷がピークを迎える夏季は、作業量が増加して休憩が取りにくくなります。繁忙期と暑さのピークが重なるのが倉庫業の特徴です
約800件
倉庫内での年間
熱中症搬送件数
約150件
フォークリフト作業中
の年間発症件数
50℃超
空調なし倉庫の
夏季最高温度

出典:厚生労働省「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」、日本倉庫協会調査

2.過去の労災事例から学ぶ

倉庫業での熱中症事故は、「屋内だから大丈夫」という油断と、繁忙期の休憩不足が重なって発生するケースが多くあります。以下の事例を教訓としてください。

事例1 大型物流倉庫・ピッキング作業

飲料水出荷のピッキング作業中に倒れる

8月上旬、空調設備のない大型物流倉庫で飲料水のピッキング作業中、作業員が棚の間で倒れているのを同僚が発見。倉庫内の気温は48℃、湿度65%に達していた。夏場の飲料出荷ピークで作業量が通常の1.5倍に増えており、休憩が十分に取れていなかった。

教訓:繁忙期こそ休憩時間を厳守する。倉庫内に温湿度計を設置し、基準値超過時は作業を中断する。人員増員や作業時間帯のシフトで、一人あたりの負荷を軽減する。

事例2 倉庫・フォークリフト作業

フォークリフト運転中に意識がもうろうとなる

7月下旬、エンジン式フォークリフトで荷物の積み下ろし作業中、運転手の反応が鈍くなりパレットに接触する事故が発生。確認したところ、運転手は軽度の意識障害を起こしていた。フォークリフトのエンジン排熱で運転席周辺の温度は52℃に達していた。

教訓:エンジン式フォークリフトから電動式への切り替えを検討する。運転手の交代ローテーションを設け、連続運転時間を制限する。フォークリフト運転中の意識障害は重大事故につながるため、体調変化時は直ちに運転を中止させる。

事例3 冷凍倉庫・荷捌き場

冷凍倉庫と荷捌き場の温度差で体調悪化

8月中旬、冷凍倉庫(-25℃)と荷捌き場(45℃)を頻繁に往復する作業中、作業員が荷捌き場で立ちくらみを起こし転倒。約70℃の温度差を繰り返すことによる自律神経の乱れが原因と診断された。

教訓:冷凍倉庫と高温エリアの往復は回数を制限する。荷捌き場に前室(緩衝エリア)を設け、急激な温度変化を緩和する。作業の分担制を導入し、同一作業員が温度差の大きい作業を連続して行わないようにする。

3.厚労省ガイドラインと事業者の義務

厚生労働省の「職場における熱中症予防基本対策要綱」は、倉庫業を含む全業種に適用されます。「屋内作業だから対象外」ということはなく、WBGT値が基準を超える倉庫では屋外と同等の対策が求められます。

倉庫業の事業者が遵守すべき義務

1
倉庫内のWBGT値の把握

倉庫内の複数箇所(高所・低所・フォークリフト通路・荷捌き場)でWBGT値を計測し記録する。屋根に近い上層部は特に高温になるため要注意

2
作業環境の改善

大型換気扇・サーキュレーターの設置、屋根への遮熱塗料塗布、スポットクーラーの配置など、蓄熱を軽減する設備投資を行う

3
作業管理と休憩確保

WBGT基準値超過時の作業短縮・休憩延長を明文化する。繁忙期でも休憩時間を削減しないルールを徹底する

4
フォークリフトの排熱対策

エンジン式フォークリフトから電動式への切り替えを計画的に進める。切り替え前は換気を強化し、運転手の交代制を導入する

5
健康管理と安全衛生教育

作業前の体調確認を毎日実施する。パート・派遣を含む全作業員に熱中症予防教育を行い、「倉庫内は危険」という認識を浸透させる

「屋内だから安全」は通用しない

倉庫内で熱中症事故が発生した場合、「屋内作業だから予見できなかった」という主張は裁判所で認められません。空調のない倉庫内が危険な高温環境になることは公知の事実であり、事業者は対策を講じる義務があります。

WBGT値の記録、対策の実施記録、安全衛生教育の記録を残すことが、法的リスクを軽減する鍵です。

4.倉庫管理者のための対策チェックリスト

倉庫の管理者・現場責任者が毎日確認すべき項目です。倉庫内の事務所や休憩室に掲示し、朝礼で活用してください。

作業開始前
  • 倉庫内の温湿度・WBGT値を計測し、当日の危険度を把握
  • 換気扇・サーキュレーター・スポットクーラーの動作を確認
  • 全作業員(パート・派遣含む)の体調を確認
  • 飲料水・塩飴・経口補水液を各作業エリアに配置
  • 冷房のある休憩室が利用可能か確認
作業中
  • WBGT値を1時間おきに計測・記録(複数エリアで)
  • WBGT基準値超過時は作業の中断・短縮を判断
  • 45分作業→15分休憩(冷房のある部屋で)のサイクルを遵守
  • フォークリフト運転手の交代ローテーションを管理
  • 水分補給の声かけを20分おきに実施
  • 作業員の顔色・動作・発汗量を巡回して確認
異常発生時
  • 直ちに作業を中止し、冷房のある休憩室・事務所に移動
  • 衣類を緩め、首・脇・鼠径部を保冷剤で冷却
  • 意識がある場合は経口補水液を少量ずつ摂取させる
  • 意識障害・嘔吐がある場合は直ちに119番通報
  • フォークリフト運転中の異変は、まずエンジンを停止して安全確保

5.WBGTを活用した作業管理

WBGT(暑さ指数)は、気温・湿度・輻射熱を総合的に評価する指標です。倉庫内は屋根からの輻射熱が大きいため、気温だけでは正確なリスク評価ができません。倉庫内の複数箇所にWBGT計を設置し、エリアごとの暑さを把握することが重要です。

WBGT値 危険度 倉庫内での対応
31℃以上 危険 作業中止を原則とする。出荷等が必要な場合は15分作業→30分冷房休憩の極短サイクル
28〜31℃ 厳重警戒 30分作業→15分休憩。フォークリフト運転手は2時間ごとに交代。水分補給を強化
25〜28℃ 警戒 1時間ごとに休憩。水分・塩分補給を励行。巡視による体調確認
25℃未満 注意 通常作業可。ただし換気の悪いエリアは個別に確認。水分補給は継続

倉庫所在地のWBGT予報を確認

heat119では環境省データに基づく全国のWBGT予報を無料公開しています。屋外のWBGT値は倉庫内環境の参考になります。

6.heat119で倉庫の安全管理を強化

heat119は倉庫業の熱中症予防にも活用いただけるサービスです。広大な倉庫内で分散して作業する従業員の体調管理と、環境データに基づく科学的な安全管理を実現します。

WBGT自動通知

環境省のWBGT予報データを自動監視し、基準値超過時に倉庫管理者へ通知。屋外のWBGT上昇から倉庫内の暑さも予測できます。

作業員の体調見守り

パート・派遣を含む全作業員の体調をスマホで記録。広い倉庫内で分散する作業員の状態を一元管理できます。

危険アラート

作業員の体調異変やWBGT値の急上昇を検知し、管理者にプッシュ通知。倉庫内で孤立した作業員の異変も素早くキャッチできます。

安全管理記録の自動保存

体調確認の実施記録、対策の履歴を自動保存。安全配慮義務の履行を証明する客観的な記録として活用できます。

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