イベント・屋外催事の熱中症対策
スタッフと来場者の安全を同時に守るために。主催者・運営会社が実践すべき予防・管理・対応の完全ガイド。
熱中症搬送件数
集中期間
目次
1.イベント・屋外催事の熱中症リスク
夏季の屋外イベントでは、運営スタッフだけでなく来場者を含む大規模な熱中症リスク管理が必要です。音楽フェス、スポーツ大会、夏祭り、フリーマーケットなど、炎天下に大人数が集まる催事では、複数の同時発症が起こりうるため、組織的な対策が不可欠です。
なぜイベント会場で熱中症が多いのか
- 日陰の少ない広大な会場:屋外会場では十分な日陰を確保できず、直射日光を長時間浴びることになります
- 群衆密集による体感温度上昇:人が密集するエリアでは周囲の体温で局所的に気温が上がり、風通しも悪化します
- スタッフの長時間連続勤務:設営から撤収まで早朝から深夜に及ぶ作業で、疲労と脱水が蓄積します
- 飲料水の不足・トイレ制約:仮設トイレの行列を避けて水分摂取を控えるスタッフ・来場者がいます
- アルコール摂取の影響:ビールフェスや夏祭りではアルコールによる利尿作用で脱水が進行します
年間熱中症搬送数(推計)
一般屋外作業者比
スタッフ発症割合
出典:消防庁「熱中症による救急搬送状況」、各イベント安全管理報告書
2.過去の労災・事故事例から学ぶ
イベント会場での熱中症事故は、運営体制の不備や過密スケジュールが原因であることが多く見られます。スタッフと来場者の双方で発生するため、重層的な対策が求められます。
設営スタッフがステージ組立中に熱中症で搬送
8月初旬、大規模野外音楽フェスの設営作業で、前日から炎天下でステージ・テント組立に従事していたスタッフ3名が相次いで体調不良を訴え救急搬送。気温37℃、設営スケジュールの遅れから休憩を十分に取れなかった。1名は重度の熱射病と診断された。
教訓:設営スケジュールに暑熱対策の休憩時間を組み込む。スケジュール遅延時も休憩削減は絶対に認めない体制が必要。
誘導スタッフが来場者対応中に倒れる
7月下旬の花火大会で、昼間から会場整理に当たっていた運営スタッフが午後5時頃に倒れた。日没前まで直射日光の下で立ちっぱなしの誘導業務を行い、夕方になって安心した矢先に症状が悪化。深部体温39.5℃で搬送された。
教訓:日中の暑熱蓄積は夕方以降に症状が出ることがある。日没後も体調監視を継続し、交代制を維持する。
マラソン大会の給水所スタッフが脱水症状
8月中旬の市民マラソン大会で、給水所を担当するボランティアスタッフが次々と体調不良を訴えた。ランナーへの給水に追われる中、自身の水分補給を怠り、4名が脱水症で治療を受けた。スタッフ用の飲料水が十分に確保されていなかった。
教訓:来場者向けの備品とは別に、スタッフ専用の飲料水・休憩スペースを必ず確保する。スタッフの健康管理は主催者の責任。
3.ガイドラインと法的義務
イベント主催者・運営会社は、雇用するスタッフに対して労働安全衛生法上の義務を負います。さらに来場者に対しても、施設管理者としての安全配慮義務や不法行為責任が発生し得ます。
主催者・事業者の法的義務
開催日のWBGT予報を事前に確認し、危険度に応じたイベント実施可否の判断基準を策定する
ミストシャワー、日陰テント、冷房付き休憩ブースなどの冷却設備をスタッフ・来場者向けに十分設置する
救護所の設置、看護師等の配置、AED・冷却資材の確保、最寄り病院との連携体制の整備
連続勤務時間の制限、交代要員の配置、暑熱順化不足の日雇いスタッフへの配慮
WBGT基準値や気温に基づくイベント中止・プログラム縮小の判断基準を事前に公表する
安全配慮義務違反のリスク
イベント会場で熱中症事故が発生した場合、スタッフに対する安全配慮義務違反に加え、来場者に対する工作物責任や不法行為責任を問われる可能性があります。近年、大規模イベントでの集団熱中症に対し、主催者の過失責任を認めた裁判例が増えています。
事前のリスクアセスメント記録、WBGT計測データ、対策の実施記録を残すことが、法的責任の軽減に不可欠です。
4.現場で使える対策チェックリスト
イベント責任者・安全管理者が確認すべき項目です。設営日から撤収日まで、各フェーズに応じた対策を実施してください。
- 開催日のWBGT予報を確認し、中止・縮小の判断基準と照合
- 全スタッフの体調確認(前日の睡眠・飲酒・持病の有無)
- 救護所の設置、冷却資材(氷・保冷剤・経口補水液)の搬入
- 日陰テント・ミストシャワー・給水ポイントの設営確認
- スタッフ用の飲料水・塩飴を来場者用とは別に十分に確保
- WBGT値を1時間ごとに計測し、場内アナウンスで注意喚起
- スタッフの連続勤務時間を管理(屋外2時間以内で交代)
- 各エリアの巡回で来場者の体調不良者を早期発見
- 救護所の利用状況をリアルタイムで把握し、状況に応じてプログラム縮小を検討
- 水分補給と日陰での休憩を定期的にアナウンス
- 給水ポイントの在庫を確認し、不足前に補充
- 発症者を直ちに救護所に搬送し、体を冷却
- 意識障害がある場合は即座に119番通報、救急車を会場入口で誘導
- 複数同時発症の場合はイベント中断・中止を判断
- 発症状況を記録し、本部・関係者に速報
5.WBGTを活用したイベント運営
WBGT(暑さ指数)は、イベント開催可否の判断基準として最も信頼性の高い指標です。日本スポーツ協会もWBGT値に基づく運動・活動の可否判断を推奨しており、イベント運営においても必須の管理項目です。
| WBGT値 | 危険度 | イベント運営での対応 |
|---|---|---|
| 31℃以上 | 危険 | 原則イベント中止・延期。やむを得ず開催する場合は屋外プログラムを大幅縮小 |
| 28〜31℃ | 厳重警戒 | 屋外プログラムの時間短縮。スタッフ1時間交代。場内の注意喚起頻度を倍増 |
| 25〜28℃ | 警戒 | 通常開催。30分ごとに水分補給のアナウンス。スタッフ2時間交代 |
| 25℃未満 | 注意 | 通常開催。基本的な水分補給の案内を継続 |
6.heat119でイベントの安全を守る
heat119はイベント運営スタッフの熱中症予防に特化した機能を提供します。広い会場に分散するスタッフの体調を一元管理し、異変を即座に検知できます。
WBGT自動通知
開催地のWBGT予報をリアルタイム監視し、基準値超過時にイベント責任者へ通知。中止・縮小判断を迅速にサポートします。
スタッフの体調見守り
勤務前の体調申告と勤務中の定期確認をスマホで簡単実施。広い会場に分散したスタッフの状態を一元把握できます。
危険アラート
体調確認への未応答や体調不良の申告を即座にイベント本部へ通知。迅速な救護対応を可能にします。
安全管理記録
体調確認の実施記録やWBGT値を自動保存。イベント後の報告書作成や安全配慮義務の履行証明に活用できます。