業界別 熱中症対策ガイド

自治体・公共事業の熱中症対策

道路維持管理・公園整備・上下水道工事に従事する作業員の安全を守る。発注者の安全配慮義務と実践対策を解説。

約500件
公共事業の
年間搬送数
約200件
道路作業中の
年間発症数
7-9月
発生集中
時期

1.公共事業現場の熱中症リスク

自治体が発注する公共事業は、道路維持管理、公園整備、上下水道工事、災害復旧など多岐にわたります。これらの作業は炎天下での長時間屋外作業が避けられず、夏季の熱中症リスクが非常に高い現場です。加えて、工期の制約や住民生活への影響を考慮した作業計画が、安全管理と相反する場面も生じます。

なぜ公共事業で熱中症リスクが高いのか

  • 道路上の輻射熱:アスファルト路面温度は夏季に60℃を超えることがあり、路面からの輻射熱で体感温度は気温より10℃以上高くなります
  • マンホール・管渠内の高温多湿:下水道の管渠内は通気が悪く、高温多湿の環境が形成されます。地上からは状況が把握しにくいリスクがあります
  • 工期圧力による休憩不足:道路工事では交通規制の時間制約があり、「規制時間内に作業を終わらせる」プレッシャーから休憩が疎かになりがちです
  • 災害復旧の緊急性:台風・地震後の復旧作業は、猛暑の中でも工期短縮が求められ、通常以上の無理が生じやすい環境です
約500件
公共事業における
年間熱中症搬送件数
約200件
道路作業中の
年間発症件数
60℃超
夏季のアスファルト
路面温度

出典:厚生労働省「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」、国土交通省「公共工事における安全対策」

2.過去の労災事例から学ぶ

公共事業の現場では、工期圧力と安全管理のバランスが崩れた時に事故が発生します。以下の事例は、発注者・元請・下請の全関係者が共有すべき教訓です。

事例1 道路維持管理・舗装補修工事

交通規制内の舗装補修作業中に倒れる

8月の猛暑日、市道の舗装補修工事中に作業員が意識を失い倒れた。交通規制の許可が午前10時から午後3時までだったため、最も暑い時間帯に集中して作業を行っていた。路面温度は65℃に達しており、作業員はアスファルトの輻射熱に長時間さらされていた。

教訓:交通規制の時間設定を見直し、猛暑日は早朝や夕方の作業に変更する。発注者は気象条件による工期変更を柔軟に認める姿勢が必要。

事例2 下水道管渠点検作業

マンホール内での点検中に熱中症発症

7月下旬、下水道の管渠点検作業中に作業員がマンホール内で体調不良を訴えた。地下の管渠内は気温38℃・湿度95%の過酷な環境で、換気も不十分だった。地上の監視者が異変に気づくのが遅れ、救出後に重度の熱中症と診断された。

教訓:管渠内作業では地上との通信手段を確保し、定期的な体調確認を実施する。換気設備の設置とWBGT計測を義務化する。管渠内作業の連続時間を30分以内に制限する。

事例3 公園整備・植栽管理作業

公園の除草・植栽作業中に複数名が体調不良

8月上旬、公園の除草・植栽管理作業中に3名の作業員が相次いで体調不良を訴えた。草刈り機のエンジン排熱と直射日光、さらに防護具(フェイスシールド・長袖・安全靴)の着用で体温が上昇。休憩所は仮設テント1張のみで、日陰が不足していた。

教訓:屋外作業では十分な日陰・休憩スペースを確保する。発注者は休憩設備の設置費用を適切に計上する。作業時間を早朝にシフトし、最も暑い時間帯を避ける工程管理が有効。

3.発注者の安全配慮義務と法的責任

公共事業においては、受注者(施工業者)だけでなく発注者である自治体にも安全配慮義務があります。国土交通省は「公共工事における熱中症対策」として、発注者が講じるべき措置を示しています。自治体は住民への啓発責任とともに、自らが発注する工事の安全管理にも責任を負います。

発注者・受注者の法的義務

1
工期の柔軟な設定

猛暑日が続く場合、発注者は工期延長や作業時間帯の変更を積極的に認める。「工期内完成」の圧力が安全を脅かさないよう配慮する

2
安全対策経費の適正計上

休憩設備、日よけ、冷房機器、WBGT計測器、飲料水などの経費を設計書に適切に計上する。安全対策は「コスト削減」の対象にしない

3
WBGT値に基づく作業管理

受注者に対してWBGT値の定期計測と記録を義務付ける。基準値超過時の作業中断判断を明確にする

4
現場巡視と安全指導

発注者の監督職員は現場巡視時に熱中症対策の実施状況を確認する。不備があれば改善を指示する

5
住民への啓発責任

自治体は住民に対して熱中症予防の啓発活動を行う責任がある。防災無線、広報誌、SNSなどを活用した注意喚起を実施する

発注者責任の拡大傾向

近年の判例では、公共工事における熱中症事故について、発注者である自治体の責任も問われるケースが増加しています。特に、猛暑下での作業を強いる工期設定や、安全対策費の不十分な計上は、発注者の過失と判断される可能性があります。

「受注者に任せていた」は免責事由になりません。発注者として安全管理体制を確認し、記録を残すことが重要です。

4.現場管理者のための対策チェックリスト

公共事業の現場代理人・主任技術者・監督職員が確認すべき項目です。朝礼や工程会議で活用してください。

作業前(朝礼時)
  • 天気予報・WBGT予報を確認し、当日の危険度を全作業員に周知
  • 全作業員の体調を確認(睡眠・飲酒・朝食・持病の有無)
  • 休憩所・日よけ・飲料水・経口補水液の設置状況を確認
  • 猛暑日は作業時間帯の変更(早朝シフト)を検討
  • 交通規制を伴う作業は、規制時間内に無理のない作業量を設定
作業中
  • WBGT値を1時間おきに計測・記録(路面作業では地表面に近い位置で計測)
  • WBGT基準値超過時は作業の中断・短縮を判断し、発注者に報告
  • 30分作業→10分休憩のサイクルを遵守(路面作業はさらに短く)
  • 水分補給の声かけを20分おきに実施
  • 管渠・マンホール内作業者との定期連絡(15分おき)
  • 交通誘導員の交代ローテーションを確保(長時間の立ち作業を避ける)
異常発生時
  • 直ちに作業を中止し、日陰・冷房のある場所に移動
  • 衣類を緩め、首・脇・鼠径部を保冷剤で冷却
  • 意識がある場合は経口補水液を摂取させる
  • 意識障害・けいれんがある場合は直ちに119番通報
  • 発注者・元請・労基署への報告を速やかに実施

5.WBGTを活用した作業管理

WBGT(暑さ指数)は、気温・湿度・輻射熱を総合的に評価する指標です。公共事業の現場では、路面からの輻射熱が大きいため、通常の気温だけでは正確なリスク評価ができません。WBGT計で実測することが重要です。

WBGT値 危険度 公共事業現場での対応
31℃以上 危険 原則作業中止。発注者に報告し工期調整を協議。やむを得ない場合は極短時間のみ
28〜31℃ 厳重警戒 作業時間を短縮。20分作業→10分休憩。路面作業・管渠作業は特に注意
25〜28℃ 警戒 1時間ごとに休憩。水分・塩分補給を励行。巡視による体調確認を強化
25℃未満 注意 通常作業可。ただし路面温度の上昇には注意。水分補給は継続

現場近くのWBGT予報を確認

heat119では環境省データに基づく全国のWBGT予報を無料公開しています。毎朝の作業判断にご活用ください。

6.heat119で公共事業の安全管理を強化

heat119は公共事業の現場における熱中症予防にも活用いただけるサービスです。発注者・元請・下請の全関係者が同じデータを共有し、科学的根拠に基づく安全管理を実現できます。

WBGT自動通知

環境省のWBGT予報データを自動監視し、基準値超過時に現場代理人・監督職員へ同時通知。作業中断の判断を迅速に行えます。

作業員の体調見守り

作業員の体調をスマホで簡単に記録。管渠内など目が届きにくい現場でも、デジタルで体調管理を行えます。

危険アラート

WBGT値の急上昇を検知し、関係者全員にプッシュ通知。発注者・元請・下請が同時に情報を共有し、迅速な判断が可能になります。

安全管理記録の自動保存

WBGT計測記録、作業中断の判断記録、体調確認の履歴を自動保存。発注者・受注者双方の安全配慮義務の履行を証明できます。

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