業界別 熱中症対策ガイド

学校・教育機関の熱中症対策

部活動・体育授業・学校行事で子どもたちの命を守るために。教職員・顧問が知るべき予防と管理の実践ガイド。

約1,500件
部活動中の
熱中症事故/年
約300件
体育授業中の
発症/年
約5名
学校関連の
年間死亡者数

1.学校現場の熱中症リスク

学校における熱中症は、部活動中の発症が全体の約7割を占めています。特に野球・サッカー・陸上など屋外スポーツでの発症リスクが高く、体育授業や運動会、校外学習でも毎年多くの児童・生徒が救急搬送されています。

なぜ学校で熱中症が多いのか

  • 自覚症状の乏しさ:児童・生徒は「頑張らなければ」という意識が強く、体調の変化を自分で認識・申告できないケースが多くあります
  • 部活動の過度な練習:特に大会前の練習強化時期に、長時間の屋外練習を続けることで体温が危険域まで上昇します
  • 集団行動による個別対応の遅れ:運動会の練習や校外学習では、一人ひとりの体調管理が行き届きにくい状況が生まれます
  • 体温調節機能の未発達:特に小学校低学年は大人に比べて発汗機能が未熟で、体温が上がりやすい身体特性があります
  • 暑熱順化の不足:夏休み明けや梅雨明け直後、体が暑さに慣れていない時期に運動会練習が始まるケースが多発しています
約1,500件
部活動中の年間
熱中症事故件数
約300件
体育授業中の年間
発症件数
約5名
学校活動に関連する
年間死亡者数

出典:日本スポーツ振興センター「学校の管理下における熱中症事故」、環境省「熱中症予防情報サイト」

2.過去の事故事例から学ぶ

学校における熱中症事故は、適切な判断と管理があれば防げたケースがほとんどです。過去の事例を教訓として、同じ悲劇を繰り返さない仕組みづくりが求められています。

事例1 高校野球部・夏季練習

野球部の夏季練習中に部員が意識不明

8月上旬、気温36℃の炎天下で高校野球部が4時間の練習を実施。部員の一人が打撃練習中にふらつきを見せたが、「気合が足りない」と練習を続行させた。30分後に意識を失い倒れ、搬送先で重度の熱中症と診断。ICUでの治療を要した。WBGT値は33℃を超えていた。

教訓:体調不良のサインを見逃さない。WBGT31℃以上では屋外での激しい運動を原則中止する。精神論で練習を続行させない判断基準の明確化が不可欠。

事例2 中学校・運動会練習

運動会の全体練習中に複数生徒が搬送

9月中旬、秋の運動会に向けた全体練習中、中学校のグラウンドで2時間連続の行進・ダンス練習を実施。練習終了間際に3名の生徒が相次いで体調不良を訴え、うち1名が意識混濁の状態で救急搬送された。残暑が厳しく、WBGT値は30℃に達していた。

教訓:9月でも残暑による熱中症リスクは高い。全体練習は30分ごとに休憩を入れ、個別の体調確認を行う。集団での活動では周囲が異変に気づきにくいため、教員の巡回監視が必要。

事例3 小学校・校外学習

校外学習の徒歩移動中に児童が発症

7月上旬、小学4年生の校外学習で公園まで約1.5kmを徒歩移動中、児童が顔面蒼白となり嘔吐。気温32℃で帽子未着用の児童もいた。引率教員は全体の列を管理しており、個々の体調変化への対応が遅れた。

教訓:校外活動では出発前にWBGT値を確認し、帽子・水筒の携行を徹底。複数教員で前後を挟み、体調変化を早期に発見できる体制を構築する。暑さが予想される場合は行程の短縮や中止を検討する。

3.環境省指針と学校の管理責任

環境省は「熱中症環境保健マニュアル」において、学校活動における具体的な指針を示しています。WBGT31℃以上では屋外での激しい運動は原則禁止とされており、教育委員会・学校管理者・教職員には法的な安全配慮義務があります。

学校が遵守すべき指針と義務

1
WBGT値に基づく活動判断

環境省の暑さ指数に基づき、WBGT31℃以上で屋外活動禁止、28℃以上で活動制限を設ける。部活動・体育授業の実施可否を客観的に判断する

2
教職員・顧問の管理責任

部活動顧問は練習前にWBGT値を確認し、活動の中止・短縮を判断する義務がある。精神論や前例踏襲ではなく科学的根拠に基づく判断が求められる

3
児童・生徒への教育

熱中症の症状・予防法を授業で指導し、自分の体調変化を報告できる環境を整える。「我慢は美徳」という誤った認識を正す

4
応急処置体制の整備

保健室との連携体制、AEDの設置場所の周知、119番通報の判断基準を全教職員で共有する

5
保護者への情報共有

気象条件による活動変更の連絡体制を整備し、家庭での朝食摂取・睡眠確保・水筒持参の協力を依頼する

管理責任と損害賠償リスク

学校での熱中症事故が発生した場合、教育委員会・学校長・部活動顧問は安全配慮義務違反として損害賠償責任を問われる可能性があります。過去の判例では、WBGT値の確認を怠り練習を強行した顧問に対し、数千万円の賠償命令が下されたケースがあります。

「例年通りの練習」「生徒が大丈夫と言っていた」は免責事由になりません。客観的なデータに基づく判断記録が重要です。

4.教職員のための対策チェックリスト

部活動顧問・体育教員・校外学習引率者が活動の前・中・緊急時に確認すべき項目です。職員室に掲示し、全教職員で共有してください。

活動前
  • 当日のWBGT予報を確認し、活動の実施可否を判断
  • 児童・生徒の体調を口頭で確認(朝食・睡眠・体調不良の有無)
  • 水筒・帽子の持参を確認。未持参者への対応を準備
  • 休憩場所(日陰・冷房のある教室)と経口補水液を確保
  • 保健室・養護教諭との連携体制を確認
活動中
  • 20〜30分ごとに給水タイムを設定(「飲みたいときに飲む」では不十分)
  • 児童・生徒の顔色・動作・発汗の異常を巡回して確認
  • WBGT値が上昇した場合、活動内容の変更・短縮・中止を判断
  • 「気分が悪い」と申告しやすい雰囲気をつくる(申告=弱さではないと伝える)
  • 連続運動は最大30分まで。必ず日陰での休憩を挟む
異常発生時
  • 直ちに活動を中止し、涼しい場所(冷房のある教室・保健室)に移動
  • 衣服を緩め、首・脇の下・太ももの付け根を保冷剤で冷やす
  • 意識がはっきりしている場合は経口補水液を少しずつ飲ませる
  • 意識がもうろう・自力で水分が摂れない場合は即座に119番通報
  • 保護者への連絡と学校管理者への報告を並行して実施

5.WBGTを活用した活動判断

WBGT(暑さ指数)は、気温・湿度・輻射熱を総合的に評価する指標です。環境省は学校での運動活動について、WBGT値に基づく活動指針を示しています。「気温だけ」では判断できない真のリスクを把握するために、WBGT値の活用が不可欠です。

WBGT値 危険度 学校活動での対応
31℃以上 危険 屋外での運動は原則禁止。部活動・体育は中止。運動会練習も延期
28〜31℃ 厳重警戒 激しい運動は中止。活動する場合は20分ごとに休憩。持久走・長距離走は禁止
25〜28℃ 警戒 積極的に休憩を取る。30分ごとに給水。体調不良者は直ちに休ませる
25℃未満 注意 通常活動可。ただし水分補給と体調観察は継続。マラソン等では注意が必要

学校所在地のWBGT予報を確認

heat119では環境省データに基づく全国のWBGT予報を無料公開しています。毎朝の活動判断にご活用ください。

6.heat119で学校の安全管理を強化

heat119は学校・教育機関の熱中症予防にも活用いただけるサービスです。教職員の経験や勘に頼る管理から、データに基づく科学的な安全管理へ移行し、児童・生徒の命を守ります。

WBGT自動通知

環境省のWBGT予報データを監視し、基準値を超えた際に教職員へ自動通知。部活動・体育授業の実施判断を迅速に行えます。

体調見守り機能

生徒・教職員の体調をスマホで簡単に記録。自覚症状を申告しにくい児童の体調変化も、データとして把握できます。

危険アラート

WBGT値の急上昇を検知し、校長・教頭・部活動顧問にプッシュ通知。活動中止の判断を全校で即時共有できます。

活動記録の自動保存

WBGT値の確認記録、活動判断の履歴を自動保存。安全配慮義務の履行を客観的に証明でき、万が一の際にも学校を守ります。

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