業界別 熱中症対策ガイド

介護・福祉施設の熱中症対策

高齢者の命を守る施設管理と職員教育の実践ガイド。温度感覚の低下・脱水傾向への対応策を解説。

約5万件
高齢者の年間
熱中症搬送数
約2,000件
施設内での
年間発症数
約1,000名
65歳以上の
年間死亡者数

1.介護・福祉施設の熱中症リスク

熱中症による死亡者の約8割が65歳以上の高齢者です。介護・福祉施設では、利用者の身体機能の低下に加え、認知症の方が自ら体調を訴えられないなど、特有のリスクが存在します。また、施設職員自身の熱中症も深刻な課題です。

なぜ介護施設で熱中症が多いのか

  • 温度感覚の低下:高齢者は加齢により暑さを感じにくくなります。室温が30℃を超えていても「暑くない」と感じ、エアコンの使用を拒否するケースが多発しています
  • 脱水傾向:高齢者は体内の水分量が減少しており、のどの渇きを感じにくいため自発的な水分摂取が不足します。また、頻尿を気にして水分を控える方も少なくありません
  • 認知症による自己申告の困難:認知症の利用者は体調不良を言葉で伝えることが困難であり、職員が表情や行動の変化から異変を察知する必要があります
  • 慢性疾患・服薬の影響:利尿剤や降圧剤を服用中の利用者は脱水リスクが高く、抗コリン薬は発汗を抑制するため体温調節が困難になります
  • 訪問介護中の移動リスク:訪問介護では利用者宅でのエアコン不使用や、移動中の車内高温が職員・利用者双方のリスクとなります
約5万件
高齢者の年間
熱中症搬送件数
約2,000件
施設内での年間
熱中症発症件数
約1,000名
65歳以上の年間
熱中症死亡者数

出典:総務省消防庁「熱中症による救急搬送状況」、厚生労働省「人口動態統計」

2.過去の事故事例から学ぶ

介護・福祉施設での熱中症事故は、室温管理の不備や利用者の体調変化の見逃しが原因となるケースが多くあります。以下の事例を参考に、施設の管理体制を見直してください。

事例1 特別養護老人ホーム・夏季

エアコン故障に気づかず利用者が重症化

8月、特別養護老人ホームの居室でエアコンが故障。認知症の入居者が暑さを訴えることができず、夜間巡回時に職員が異常な発汗と高体温を発見。搬送時の深部体温は40.2℃で、重度の熱中症と診断された。居室の室温は35℃に達していた。

教訓:エアコンの動作確認を定期的に行い、居室の温湿度を常時モニタリングする体制が必要。認知症の利用者は自己申告できないため、室温管理は施設側の責任である。

事例2 デイサービス・送迎車内

送迎車内での長時間待機による発症

7月の猛暑日、デイサービスの送迎で利用者を自宅まで順次送り届ける途中、最後の利用者が車内で約50分間待機。エアコンは作動していたが後部座席まで冷気が届かず、到着時に意識がもうろうとした状態だった。車内温度計は後部で33℃を記録していた。

教訓:送迎ルートを見直し、高齢者の車内待機時間を最小化する。車内の温度管理は前席だけでなく後部座席も確認する。猛暑日は送迎人数を減らすか、送迎回数を増やす対応が必要。

事例3 訪問介護・利用者宅

エアコン不使用の居宅で訪問介護中に発症

8月中旬、訪問介護員が独居高齢者宅を訪問。利用者は「電気代がもったいない」とエアコンを使用しておらず、室温は34℃に達していた。訪問介護員自身も入浴介助中に体調を崩し、利用者・職員の双方が熱中症を発症した。

教訓:訪問時にまず室温を確認し、28℃を超えている場合はエアコンの使用を促す。利用者の同意が得られない場合でも、ケアマネジャー・家族と連携してエアコン使用を働きかける。訪問介護員自身の体調管理も重要。

3.厚労省通知と施設の管理責任

厚生労働省は毎年、介護施設等に対して熱中症予防に関する通知を発出しています。施設管理者は利用者の安全を守る善管注意義務を負っており、室温管理や水分補給の体制整備は法的義務として求められます。

施設が遵守すべき管理義務

1
室内環境の管理

居室・共用部の室温を28℃以下に維持する。温湿度計を設置し、定期的に記録する。エアコンの定期点検を実施する

2
水分・塩分補給の体制

利用者一人あたり1日1,200ml以上の水分摂取を目標とし、こまめな声かけと記録を行う。のどの渇きを感じにくい高齢者には定時に提供する

3
利用者の健康観察

バイタルサインの定期測定、表情や行動の変化への注意、脱水症状の早期発見に努める。認知症の方には特に注意深い観察が必要

4
職員への教育・研修

熱中症の初期症状の見分け方、応急処置の方法、服薬と熱中症リスクの関係について定期的に研修を実施する

5
職員自身の熱中症予防

入浴介助や屋外でのレクリエーション活動など、職員自身が高温環境にさらされる場面での対策を講じる

施設の法的責任リスク

施設内で利用者が熱中症になった場合、施設運営者は善管注意義務違反として損害賠償責任を問われます。過去の裁判では、室温管理を怠った施設に対して高額の賠償命令が下された事例があります。特に認知症の利用者が自ら暑さを訴えられない状況での事故は、施設側の過失が厳しく問われます。

室温記録・水分摂取量の記録・巡回記録を残すことが、施設を守る最大の防御策です。

4.施設職員のための対策チェックリスト

介護・福祉施設の職員が毎日確認すべき項目です。各フロア・ユニットに掲示し、申し送り時に活用してください。

朝の確認事項
  • 全居室・共用部の室温を確認(28℃以下であること)
  • エアコンが正常に作動していることを確認
  • 利用者のバイタルサイン(体温・血圧・脈拍)を測定
  • 当日の気温・WBGT予報を確認し、屋外活動の可否を判断
  • 飲料水・経口補水液の備蓄を確認
日中のケア
  • 2時間ごとに水分補給を促す(1回100〜200ml)
  • 利用者の表情・皮膚の乾燥・尿量の変化を観察
  • 認知症の利用者は特に注意深く観察(落ち着きのなさ、ぼんやり等)
  • 入浴介助時は浴室温度を確認し、介助時間を短縮
  • 屋外レクリエーションはWBGT28℃以上で中止または屋内に変更
  • 職員自身もこまめに水分補給を行う
異常発生時
  • 涼しい場所に移動し、衣服を緩める
  • 体温測定。38℃以上の場合は首・脇・鼠径部を冷却
  • 嚥下機能に問題がなければ経口補水液を少量ずつ摂取させる
  • 意識レベルの低下・嘔吐がある場合は直ちに119番通報
  • 嘱託医・家族への連絡、発生状況の記録を同時進行で実施

5.WBGTを活用した環境管理

WBGT(暑さ指数)は、気温・湿度・輻射熱を総合的に評価する指標です。介護施設では室内のWBGT値を把握し、利用者の活動内容や外出の可否を判断する基準として活用することが重要です。高齢者は健康な成人より低いWBGT値で熱中症を発症するリスクがあります。

WBGT値 危険度 介護施設での対応
31℃以上 危険 屋外活動全面中止。室内の空調を最大稼働。1時間ごとの水分補給と巡回
28〜31℃ 厳重警戒 外出・屋外レク中止。送迎時の車内温度に注意。入浴介助時間を短縮
25〜28℃ 警戒 屋外活動は短時間に限定。日陰での活動のみ。水分補給の回数を増やす
25℃未満 注意 通常活動可。ただし高齢者は低いWBGTでも発症リスクあり。観察は継続

施設所在地のWBGT予報を確認

heat119では環境省データに基づく全国のWBGT予報を無料公開しています。毎朝の活動判断にご活用ください。

6.heat119で施設の安全管理を支援

heat119は介護・福祉施設の熱中症予防にも活用いただけるサービスです。利用者の体調変化を見逃さず、データに基づく科学的な環境管理で施設の安全を守ります。

WBGT自動通知

環境省のWBGT予報データを自動監視し、基準値超過時に施設管理者へ通知。屋外活動・送迎の判断を迅速に行えます。

利用者の体調見守り

職員がスマホで簡単に利用者の体調を記録。水分摂取量や体温の推移をデータ化し、体調変化の予兆を早期に発見できます。

危険アラート

WBGT値の急上昇を検知し、施設長・看護師にプッシュ通知。夜間のエアコン故障なども、温度異常として早期に検知できます。

記録管理と法的保護

環境管理の実施記録、利用者の体調記録を自動保存。善管注意義務の履行を客観的に証明でき、施設を法的リスクから守ります。

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