熱中症対策の記録保存義務
WBGT測定・体調確認・教育記録の管理方法と保存期間。「対策した」を「証明できる」に変える。
記録の保存期間
の保存期間
敗訴する割合
1.なぜ記録保存が重要なのか
熱中症対策において最も見落とされがちなのが「記録」です。対策を実施していても、その記録がなければ法的には「対策していなかった」とみなされるリスクがあります。
「対策した」と「記録がある」の決定的な違い
熱中症事故が発生し裁判になった場合、立証責任は事業者側にあります。「対策していました」という主張だけでは不十分で、「いつ・誰が・何を実施したか」の記録が求められます。
- 「WBGT値は確認していました」→ 記録がなければ確認していなかったと推認
- 「休憩は取らせていました」→ 時刻・場所・時間の記録がなければ不十分と判断
- 「WBGT値を毎時記録し、28℃超過時に休憩を指示した記録あり」→ 安全配慮義務を履行
裁判での記録の重要性
過去の判例では、記録の有無が判決を左右しています。記録がない場合、事業者の「対策していた」という主張は採用されず、安全配慮義務違反が認定されるケースがほとんどです。
労基署の調査での記録
熱中症労災が発生すると、労基署は現場の安全対策の記録を確認します。WBGT測定記録、体調確認記録、教育記録が整備されていれば、是正勧告を受けるリスクが大幅に低下します。
2.保存すべき記録の種類
厚生労働省のガイドラインと労働安全衛生法に基づき、以下の記録を保存する必要があります。
- 測定日時・場所・WBGT値(1時間ごとの記録が望ましい)
- 基準値超過時の対応内容(作業中断・休憩延長等)
- 使用した測定器の型番・校正日
- 記録者名
- 作業前の体調確認(睡眠・飲酒・朝食・持病の有無)
- 作業中の巡視記録(巡視者名・時刻・確認結果)
- 体調不良の申告記録(症状・対応・その後の経過)
- 暑熱順化の状況(新規入場日からの日数)
- 順化計画書(対象者・期間・作業負荷の段階)
- 日々の順化実施記録(作業時間・負荷レベル)
- 順化完了の判定記録
- 教育実施日・場所・時間
- 教育内容(熱中症の症状・応急処置・WBGT等)
- 受講者名簿と署名
- 講師名・使用テキスト
3.記録の保存期間と方法
労働安全衛生法および関連法令で定められた保存期間を遵守する必要があります。ただし、訴訟リスクを考慮すると、法定期間以上に保存することが推奨されます。
| 記録の種類 | 法定保存期間 | 推奨保存期間 | 根拠法令 |
|---|---|---|---|
| 安全衛生委員会議事録 | 3年 | 5年 | 安衛則23条4項 |
| 作業環境測定記録 | 3年 | 5年 | 安衛法65条の2 |
| 健康診断結果 | 5年 | 10年 | 安衛則51条 |
| 安全衛生教育記録 | 3年 | 5年 | 安衛法59条 |
| WBGT測定・対策記録 | 明文規定なし | 5年 | 基発0420第3号 |
損害賠償請求権の時効に注意
安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権の消滅時効は、被害者が損害を知った時から5年、または不法行為時から20年(民法724条の2)です。法定保存期間を過ぎて記録を破棄すると、後から訴訟になった際に対策の履行を証明できなくなるリスクがあります。
4.紙の記録 vs デジタル記録
多くの現場では未だに紙ベースの記録が主流ですが、紙の記録には多くのリスクが伴います。デジタル記録への移行は、法的な安全性と業務効率の両面でメリットがあります。
紙の記録の問題点
- 紛失・汚損リスク:現場で記録した用紙が雨で濡れる、紛失するケースが頻発
- 改ざん疑いのリスク:事後に書き足した場合、改ざんと疑われる可能性
- 検索・集計が困難:過去の記録を探すのに時間がかかる
- 保管スペース:数年分の記録は相当な物理的スペースが必要
デジタル記録のメリット
- タイムスタンプ付き:記録日時が自動で付与され、改ざんの疑いを排除
- 紛失リスクなし:クラウド保存で災害時にもデータが保全される
- 即座に検索・出力:労基署の調査や裁判時に迅速に提出可能
- 自動集計・分析:傾向の把握や報告書の自動生成が可能
電子記録の法的有効性
労働安全衛生法における記録の電子化は認められています。厚生労働省は「電磁的記録による保存」を許容しており、適切なシステムで管理されたデジタル記録は紙の記録と同等の法的効力を持ちます。ただし、容易に検索・閲覧できることと改変履歴が確認できることが条件です。
5.heat119による自動記録管理
heat119は、熱中症対策に必要な記録を自動で作成・保存するシステムです。紙の記録管理から解放され、法令遵守を確実に証明できます。
WBGT自動記録
環境省データに基づくWBGT値を自動で記録。測定日時・場所・値をタイムスタンプ付きで保存し、基準値超過時の対応もログに残します。
体調申告記録
作業員の毎朝の体調申告がデジタルで自動保存。睡眠・体調・飲酒の有無など、作業前確認の記録を確実に残せます。
対策実施ログ
休憩指示、水分補給の声かけ、WBGT超過時の作業中断など、対策の実施履歴を自動でログに残します。
レポート自動生成
日次・週次・月次の安全管理レポートを自動生成。労基署への提出や元請への報告に即座に対応できます。