法令・コンプライアンスガイド

2025年 熱中症対策 法改正のポイント

厚生労働省「職場における熱中症予防基本対策要綱」の改正により、WBGT管理・暑熱順化・安全衛生教育が一段と厳格化されました。企業が押さえるべき変更点と対応策を解説します。

要綱改正
厚労省通達の
主要改正
義務化
WBGT記録の
厳格化方向
7日間
順化期間の
明示義務

1.2025年の熱中症対策に関する法改正の概要

2025年、厚生労働省は「職場における熱中症予防基本対策要綱」を改正し、事業者に求める熱中症予防措置をより具体的かつ厳格な内容へと強化しました。近年の猛暑の常態化と職場での熱中症死亡事故の高止まりを受け、従来の「努力義務」から「実質的な義務」への転換が進んでいます。

2024年の職場における熱中症死亡者数は30人を超え、死傷者数は1,200人以上にのぼりました。厚労省は「従来の対策では不十分」との認識のもと、より踏み込んだ規制強化に動いています。

-- 厚生労働省「令和6年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況」

2025年改正の主なポイント

  • WBGT測定・記録の厳格化:測定頻度・記録方法・測定器の校正について具体的な基準が明示された
  • 暑熱順化計画の策定義務化:梅雨明け・連休明け等における7日間以上の順化計画の策定・実施・記録が明確に義務化された
  • 安全衛生教育の標準化:教育内容・頻度・記録保存期間について具体的な基準が設けられた
  • 作業中断基準の数値化:WBGT基準値超過時の作業中断・休憩のルールがより明確に数値化された
  • 体調管理の電子化推奨:紙ベースの管理から電子記録への移行が推奨されるようになった

出典:厚生労働省「職場における熱中症予防基本対策要綱の一部改正について」(令和7年3月)

2.暑熱順化の義務強化

2025年の改正で最も注目されるのが、暑熱順化計画の策定・実施の明確な義務化です。従来は「暑熱順化に配慮すること」という抽象的な表現にとどまっていましたが、改正後は具体的な実施基準が明示されました。

新規義務

7日間の暑熱順化期間の明示

暑熱環境での作業を開始または再開する際、最低7日間の順化期間を設けることが明確に義務付けられました。高齢者や持病のある作業員については14日間が推奨されています。

対象場面

  • ・ 梅雨明け後の屋外作業開始時
  • ・ ゴールデンウィーク・お盆等の長期休暇明け
  • ・ 新規入場者の暑熱環境作業開始時
  • ・ 屋内作業から屋外作業への配置転換時
新規義務

順化計画書の作成義務

事業者は暑熱順化計画を書面(電子でも可)で作成し、保管する義務を負うことになりました。計画書には対象者リスト・日別の作業負荷率・体調確認の方法・完了判定基準を含める必要があります。

強化

順化期間中の体調管理の強化

順化期間中は通常以上の頻度で体調確認を行い、その記録を残すことが求められています。具体的には、作業開始前・午前中・午後の最低3回、対面での体調確認を実施し、確認者名とともに記録することが求められます。

熱中症死亡事故の約3割は「暑熱環境での作業開始から7日以内」に発生しています。順化計画の義務化は、この統計的事実に基づく措置です。

3.WBGT測定・記録の厳格化

WBGT値(暑さ指数)の測定・記録について、これまで以上に具体的な基準が設けられました。「測定していた」だけではなく、「どのように・どの頻度で・どう記録しているか」が問われるようになっています。

項目 従来の基準 2025年改正後
測定頻度 「適宜測定」(具体的頻度の明示なし) 1時間ごとの測定を原則義務化
記録方法 紙・口頭確認でも可 電子記録を推奨、日時・測定値・場所・担当者を明記
測定器の校正 規定なし 年1回以上の校正またはメーカー点検を義務化
記録保存期間 明示なし 当該シーズン終了後3年間の保存を推奨
基準値超過時の対応 「適切な措置を講じる」 WBGT28℃超:休憩強化、31℃超:作業中断を原則化

測定場所の要件

  • 作業員が実際に作業する場所の近傍で測定すること
  • 屋外作業の場合は日なた・日陰の両方で測定することが望ましい
  • 環境省の暑さ指数予報のみに依拠するのではなく、現場実測を基本とする
  • 複数の作業場所がある場合は、それぞれの場所で測定する

違反した場合のリスク

  • WBGT未測定での事故 → 安全配慮義務違反が認定されやすくなる
  • 記録がない場合 → 「測定していなかった」と同等に扱われる
  • 校正未実施 → 測定値の信頼性が否定されるリスク
  • 労基署の調査で是正勧告の対象となりうる

出典:厚生労働省「WBGT値に基づく作業管理の強化について」(令和7年)

4.安全衛生教育の充実

2025年改正では、安全衛生教育についても具体的な基準が示されました。「教育を実施した」という事実だけでなく、教育の質と記録の管理が重視されるようになっています。

1

新規入場者への教育義務の明確化

新たに暑熱環境の作業に従事する者に対して、作業開始前に個別の熱中症予防教育を行うことが明確に義務付けられました。教育内容は以下を含む必要があります。

  • ・ 熱中症の症状(I度〜III度)と初期対応の手順
  • ・ WBGT値の意味と現場の基準値・行動ルール
  • ・ 水分・塩分補給の具体的な方法と頻度
  • ・ 体調不良時の申告ルートと緊急連絡先
2

年次教育の実施と記録保存

毎年夏季シーズン前に全作業員を対象とした安全衛生教育を実施し、その記録を保存することが求められています。記録には以下を含めてください。

  • ・ 教育実施日・実施場所・所要時間
  • ・ 教育内容の概要(使用資料を添付することが望ましい)
  • ・ 参加者名簿(氏名・所属・サイン)
  • ・ 教育実施者の氏名・資格
  • ・ 記録の保存期間は5年以上が推奨
3

教育内容の標準化

改正要綱では教育内容の標準カリキュラムが提示されました。各事業者はこのカリキュラムをベースに、業種や作業内容に応じた教育を行うことが求められます。

  • ・ 熱中症の発症メカニズムとリスク因子の理解
  • ・ WBGT値の読み方と作業管理への活用方法
  • ・ 暑熱順化の必要性と具体的な実施方法
  • ・ 緊急時の応急処置と119番通報の判断基準
  • ・ 過去の事故事例に基づく教訓の共有

外国人労働者への配慮

外国人労働者に対しては、母国語または「やさしい日本語」で教育資料を作成し、理解度を確認する措置を講じることが推奨されています。特に技能実習生については、入国後の早い段階で教育を実施することが重要です。

5.企業が今すぐ対応すべきこと

2025年改正に対応するため、企業は以下のチェックリストに沿って準備を進めてください。夏季シーズン前の早期対応が、事故防止と法的リスク回避の鍵です。

2025年改正対応チェックリスト

夏季シーズン開始前に完了させてください

  • WBGT測定器の校正・点検を実施する

    メーカーに校正を依頼するか、社内で校正手順に基づいて点検を行う。校正記録を保管する。

  • WBGT測定・記録のルールを文書化する

    1時間ごとの測定、電子記録、担当者の明記など、2025年基準に沿った測定ルールを策定する。

  • 暑熱順化計画のテンプレートを作成する

    対象者リスト・7日間の作業負荷表・体調確認シートを含むテンプレートを準備する。

  • 安全衛生教育のカリキュラムを更新する

    2025年改正内容を反映した教育資料を作成し、シーズン前教育の日程を確定する。

  • 作業中断基準を数値化して周知する

    WBGT28℃超・31℃超における具体的な行動ルール(休憩時間・中断・交代制)を全員に周知する。

  • 記録管理体制を整備する

    WBGT記録・体調確認記録・教育実施記録・順化計画記録の保存方法と担当者を決定する。

  • 管理者・職長への法改正内容の周知教育を実施する

    管理者自身が2025年改正の内容を正しく理解し、現場で指導できる状態にする。

対応の遅れがもたらすリスク

2025年改正基準に対応していない状態で熱中症事故が発生した場合、「最新の基準を知りながら対応を怠った」として、より重い安全配慮義務違反が認定される可能性があります。早期の対応が企業を守ります。

6.heat119で2025年基準に対応

heat119は2025年の法改正内容を反映した機能をすでに提供しています。紙やExcelでの管理では対応が困難な新基準も、heat119のクラウドシステムならスムーズに対応可能です。

WBGT自動記録

環境省データに基づくWBGT値を自動取得し、1時間ごとの記録を自動生成します。日時・測定値・場所のすべてが電子記録として残り、2025年基準に完全準拠します。

暑熱順化管理機能

新規メンバー登録時に自動で「順化期間中」フラグを設定。7日間の順化スケジュールに基づく体調チェック強化と作業負荷管理を支援します。

教育記録管理

安全衛生教育の実施日・参加者・内容をシステムに記録。5年間のクラウド保存で、労基署調査時にも即座に提出できる体制を構築します。

基準値超過アラート

WBGT値が28℃・31℃を超えた際に管理者へ自動通知。作業中断・休憩強化の判断を即座に行え、アラート発令・対応の記録も自動保存されます。

2025年基準に確実に対応する

heat119は初期費用0円。法改正に対応した記録管理を30日間無料でお試しいただけます。

関連コンテンツ