WBGT測定の法的義務
事業者が知るべき暑さ指数(WBGT)の法的根拠・基準値・測定方法を解説。厚労省通達と労安則に基づく具体的な対応義務をわかりやすく説明します。
WBGT基準値
1.WBGT(暑さ指数)とは
WBGT(Wet Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)は、気温・湿度・輻射熱を総合的に評価する熱中症リスク指標です。単なる気温とは異なり、人体が実際に感じる暑熱負荷を科学的に表現します。
WBGTの算出要素
- 湿 湿球温度(Wet Bulb):湿度による体感への影響。発汗による冷却効果を評価。
- 黒 黒球温度(Globe):太陽・周囲からの輻射熱。屋外環境では特に重要。
- 乾 乾球温度(Dry Bulb):一般的な気温。WBGTの算出に加味されます。
WBGTの特徴
- 単位は℃だが、気温よりも通常5〜8℃程度低い値を示す
- 屋外:WBGT = 0.7×湿球 + 0.2×黒球 + 0.1×乾球
- 屋内:WBGT = 0.7×湿球 + 0.3×黒球
- 環境省・厚労省が推奨する熱中症リスク管理の標準指標
「気温が35℃でも湿度が低ければ熱中症にならない」は誤解です。WBGTは気温・湿度・輻射熱を複合的に評価するため、曇天の高湿度日でもWBGTが高くなる場合があります。
2.測定が求められる法的根拠
事業者がWBGT値を把握・記録することは、法令および行政指導に基づく安全配慮義務の一環です。以下の法令・規格を正確に理解することが重要です。
職場における熱中症予防基本対策要綱
厚生労働省が定める熱中症予防の基本的な対策要綱。WBGT値の把握を作業環境管理の基本として明示しており、WBGT値が基準値を超える場合の休憩・作業短縮措置を事業者に求めています。事実上の義務として全業種に適用されます。
第617条:暑熱場所における措置
労働安全衛生規則第617条は、著しく暑熱な場所での作業について、事業者に適切な措置を講じる義務を課しています。WBGT管理はこの義務を履行するための具体的手段として機能します。
JIS Z 8504:WBGT指数に基づく作業環境の評価
作業環境の熱的条件に関する人間工学的評価手法を規定する日本産業規格。作業強度区分ごとのWBGT基準値と、測定方法・評価手順を定めています。ISO 7243の日本版に相当します。
ISO 7243:熱環境における暑熱ストレスの推定
WBGTを用いた熱環境評価の国際規格。多国籍企業や輸出産業においては、ISO 7243に準拠した管理が求められる場合があります。JIS Z 8504の基礎となる規格です。
安全配慮義務違反のリスク
熱中症事故が発生した際、事業者がWBGT値を把握・記録していなかった場合、安全配慮義務違反として民事上の損害賠償責任を問われます。過去の裁判例では、WBGT管理の不備を理由に事業者への賠償命令が出た事例が複数あります。
「対策を実施していた」だけでなく、「記録として証明できる」ことが法的争点で非常に重要です。
3.WBGT基準値と作業強度
WBGT基準値は作業強度によって異なります。また、暑熱環境に慣れている「暑熱順化者」と、慣れていない「未順化者」でも基準値が異なります。
| 作業強度 | WBGT基準値 暑熱順化者 |
WBGT基準値 未順化者 |
作業例 |
|---|---|---|---|
|
安静
座位・立位の休憩
|
33℃ | 32℃ | 休憩、事務作業 |
|
軽作業
手・腕の作業が主体
|
30℃ | 29℃ | 軽量物の取り扱い、組立作業 |
|
中等度作業
手・腕・脚の作業
|
28℃ | 26℃ | 資材搬送、建築仕上げ作業 |
|
重作業
全身を使う激しい作業
|
26℃ | 23℃ | コンクリート打設、土工事 |
|
極重作業
最大に近い負荷
|
25℃ | 22℃ | 掘削、重量物運搬 |
出典:JIS Z 8504 / 厚生労働省「職場における熱中症予防基本対策要綱」
建設業
- 足場組立・解体:重作業
- コンクリート打設:重〜極重作業
- 仕上げ・塗装:中等度作業
- 監督・巡視:軽〜中等度作業
製造業
- 溶接・溶断:中等度〜重作業
- ライン組立:中等度作業
- プレス・鍛造:重〜極重作業
- 品質検査:軽作業
物流業
- ピッキング:中等度作業
- 荷役・積み下ろし:重作業
- フォークリフト:軽〜中等度作業
- 仕分け:中等度作業
4.測定方法と記録
適切なWBGT管理のために、測定器の選定・測定のタイミング・記録方法を正しく理解する必要があります。
測定器の種類
黒球付きWBGT計
黒球・湿球・乾球センサーを一体化した専用機器。最も正確で、屋外測定に最適。価格は2〜10万円程度。
電子式WBGT計
センサーで各要素を計測しWBGT値を自動算出。データ記録・ログ出力機能を持つ製品も多く、記録管理に便利。
簡易式・アプリ
スマートフォンアプリや小型センサーを利用。精度は劣るが携帯性に優れ、参考値として活用可。環境省予報との併用推奨。
測定のタイミング
- 作業開始前(朝礼時):その日のリスクレベルを全員に周知
- 1時間ごと(厚労省通達の推奨頻度):気温上昇の激しい10〜15時は特に重要
- 作業場所ごと:屋外・屋内・地下では値が大きく異なる場合がある
- 天候の急変時:晴れから曇りへの変化でも湿度上昇によりWBGTが変動する
環境省WBGT予報の活用
環境省は全国主要地点のWBGT予報を公開しています。現地測定を補完するデータとして活用でき、前日からの事前計画立案にも役立ちます。
- 日時(年月日・時刻)
- 測定場所(現場名・作業エリア)
- WBGT値(測定値)
- 作業内容・強度
- 対応措置(休憩延長・作業中断等)
- 記録者氏名
5.heat119でWBGT管理を自動化
heat119は環境省のWBGT予報データを活用し、WBGT管理を自動化するクラウドサービスです。手動測定・手書き記録の手間を省きながら、厚労省通達に対応した記録管理を実現します。
環境省WBGT予報の自動取得
全国主要地点のWBGT予報を毎時自動取得。現場に近い地点のデータを選択するだけで、WBGT監視が開始されます。
基準値超過時の自動アラート
作業強度に応じたWBGT基準値を設定すると、超過時に管理者・リーダーへ自動でプッシュ通知。見落としを防ぎます。
記録の自動保存・CSV出力
WBGT値・アラート履歴・対応記録がクラウドに自動保存。厚労省通達に沿った記録をCSVで出力でき、労基署対応も万全。
スマホで完結する現場管理
作業員の体調申告・リーダーの確認・管理者への報告まで、すべてスマートフォンで完結。ペーパーレスで記録が自動蓄積されます。